四季の絵本手帖『コーギビルのいちばん楽しい日』

コーギビルのいちばん楽しい日

コーギビルのいちばん楽しい日

 コーギビルは、コーギー犬の町です。登場するのは、作者ターシャ・チューダーのペットやお人形たちばかり。今でも19世紀の暮らしぶりを大切にして自給自足の生活を営む作者ですから、絵本の背景には「便利さ」や「効率」といった最先端の文明から少し距離を置いた懐かしさが顔をのぞかせます。3部作からなるシリーズのクリスマス編では、彼女が幼少期に体験したクリスマスの習慣がこなれた水彩画で描かれます。
 クリスマスが近づいてきたのでコーギビルの住人たちはみな、胸を踊らせます。子どもたちはキャンディーを入れる三角帽子やアドベント・カレンダー作りに大忙し。大人たちはそれぞれにリースを作り、アドベント・キャンドルに火を灯しました。街では郵便屋さんが配達に大わらわです。新しくひっこしてきたにわとりの雑貨屋チカホミニーさん一家、薬屋コーギ犬のストーファー兄弟、カーディガン・コーギ犬の夫婦たちは、住人たちに大歓迎され暖かなクリスマスを迎えました。
 お茶やリース作りをする部屋は作者の住まい、家具や食器は実際毎日使っているもの……といったように、私的な思いや体験が秘められた絵本です。まごころのこもったイラストの中に、すてきな発見があるかもしれません。(asukab)