四季の絵本手帖『神の道化師』

Clown of God

Clown of God

 フランスに古くから伝わる民話を、作者の人生体験と合わせ語り変えた絵本です。物語の舞台はルネサンス期のイタリア・ソレント。みなしごだったジョバンニ少年は、お手玉の特技を持っていました。旅芸人の親方に認められたジョバンニは、いっしょに旅をして舞台を踏みます。そのうち7色の玉を空中でくるくると回す芸で身を立て、どの町でも人気を博すようになりました。月日は流れ、人々を喜ばせるために見せたジョバンニの芸は、加齢とともに精彩を欠き始めます。
 聖フランシスコ会に属していたこともある作者の魂のこもった宗教的作品です。家も両親もいない少年が華やかな人生のひとときを味わい、老いていくという人生の春夏秋冬が描かれます。人は何のために生きるのか――子どもには難しいテーマかもしれませんが、大人になるにつれ作品の深さが実感できることでしょう。故郷ソレントに戻り、クリスマスの大聖堂で見せるジョバンニの芸は人生の意味を考えさせてくれます。
 読後にはそれぞれの場面がゆっくりと走馬灯のように巡ります。いつまでも心にとどめておきたい、ささやかで味わい深いメッセージを含んだ作品です。(asukab)