四季の絵本手帖『クリスマス人形のねがい』

クリスマス人形のねがい (大型絵本)

クリスマス人形のねがい (大型絵本)

 クリスマスに繰り広げられる、女の子とお人形の願いごとのお話です。イブの朝、ブロッサムさんのおもちゃの店では、「今日中に買ってもらわなくちゃ」と、おもちゃたちがささやき合っていました。昨日箱から出してもらったばかりのクリスマス人形ホリーもその1人です。一方、孤児院で暮らす女の子アイビーはクリスマス休暇を別の施設で過ごすため、切符とわずかなお金、食べ物、そして施設の住所が書かれた紙切れを持ち一人汽車に乗り込みました。ところがアイビーは、「あたし、おばあちゃんのとこへ行くんだもん」と身寄りのない自分を否定するかのようにつぶやいてアップルトンという町で下車してしまいます。その夜、アイビーは町の市場で生まれて初めてクリスマスの賑わいを体験しました。ホリーのいるおもちゃの店は、この町の一角にありました。
 孤児アイビーとクリスマス人形ホリー――。物語は主人公たちの抱く願いを織りなし進展します。読者はアイビーの置かれた状況と、ホリーの佇むお店の中という2つの場面を頭に描きながらストーリーを追うことになります。途中、子どもは、どんな苦境にも涙しないアイビーの強さに驚き、彼女の魅力にどんどん引き付けられていくことでしょう。クリスマスの町の情景は華やかで美しく、その中で運命に導かれる主人公たちの幸せを願わずにはいられなくなります。作品の最後には「もし、こうならなかったら……」という仮定文がいくつか並びますが、人生とはこういうものと不思議な気持ちにも駆られることでしょう。帰結には、クリスマスらしい心温まる出会いが待っています。(asukab)