現代の贈り物

 慎みの季節アドベントとは裏腹に、コマーシャリズムの踊る季節がやってきた。物のなかった時代には、1年に1度の贈り物は特別な意味を持ったことだろう。贈る人も受けとる人も、心あたたまるひとときを過ごしていた。今も同じような気持ちは味わえるのかもしれないが、昔と比べたらうれしさの度合いはずいぶん薄れて見える。生活物資は十分に足り、欲しい物は待たずに手に入り、ともすれば必要のないものまで揃う時代に、「贈り物」の役割は異なるカテゴリーに分類されるんじゃないか。
 『思いがけない贈り物』は、小判サイズ(13.5×19.5センチ)の大人向きクリスマス絵本。帯に「モノがあふれる現代、相手を本当に幸せにする贈り物とは?」とあった。配り忘れたお人形を誰に届けるべきかサンタクロースが思案するお話で、出てくる子どもたちの生活背景に「贈り物」を囲む人間の生きざまが投影される。舞台は現代のドイツ。コンピュータやタクシーを利用するなどサンタさん自身が今を生きる人として登場し、おとぎ話であっても現実味を帯びた、風刺を含む展開だ。

 後半登場するミスター・ラブの一言「みな、軽率に人に物を贈り過ぎますよ」は、欧米の行き過ぎた商業主義的クリスマスのあり方を知っている人には、ズバリ思い当たるふしがあるはず。ソーヴァのイラストに引かれて手にした絵本だったが、作者の意図は十分伝わってきた。贈り物は、本当に必要としている人が受け取るものである。 
 収穫感謝の翌日はブラック・フライデーと呼ばれ、米国小売業界ではホリデー商戦を占う重要な日と位置づけられている。今年はどう分析されたのか。フォーブスをはじめとするビジネス各誌は大方、昨年より5〜6%増の売り上げを予測していた。上向き経済を受けてのことだから、当然といえば当然か。しかしながら……、これだけ時代が豊かになってくると、「モノ」より「時間」のほうが大切と感じる人はたくさんいると思うのだけど、どうなのだろう。(asukab)

思いがけない贈り物

思いがけない贈り物