思い出のクリスマス絵本

 『子うさぎましろのお話 (おはなし名作絵本 3)』は、幼少期の思い出がいっぱいのクリスマス絵本。おもちゃのなる白いクリスマスツリーを、何度も夢に描いた記憶がある。「種」は子ども心をくすぐる存在で――そこから何が出てくるか、わからないから――、ましろの埋めた特別なもみの木の種にもずいぶん魅せられた。
 クレヨンのイラストを今見ると、なんてきれいなデザインなんだろうと感嘆する。線にも空間にも無駄がなく、凛々と冬の凍てついた空気がそこに流れている。けれどもクレヨンという子どもにもっとも近い画材だから、当然ぬくもりだってあるのだ。見つめるだけで落ち着けるイラストって、出会えそうでなかなか出会えない。
 さて、読む年齢により、まったく感じ方の異なるメディアが絵本。大人になってましろを読み返し、日本的叙情に満ちた作品だと思えた理由は何だろう。うそをついてしまったましろの気持ちが一気に子どもに乗り移り、浄化体験をもたらすからか。でも、こういう清らかな叙情は大切にしたいなと素直に思う。人間の心はこうありたいもの。いずれにしても、子どもに身近な体験を通して真実の尊さを描く物語は美しく、クリスマスにふさわしい。サンタのおじいさんが示した思いやりは、わたしの憧れになっている。(asukab)

子うさぎましろのお話 (おはなし名作絵本 3)

子うさぎましろのお話 (おはなし名作絵本 3)