笑いと涙のババール・クリスマス絵本

 ババールがサンタクロースを探しに出かける『ババールとサンタクロース (児童図書館・絵本の部屋―グランド・アルバム・ぞうのババール)』は、息子のお気に入りクリスマス絵本である。今年もいっしょに読み、大好きなページを確かめた。
 まず、ババールが道中で出会う屋根裏部屋のねずみたちのページと橋の下に居を構えるラザロ・カンペッチさんのページ――息子の笑いのつぼにはまった場面で、声質を変えて読むと親子ともども笑いが止まらない。小人とサンタクロースが暮らす家の見取り図――この見開きはマップの魅力ここにありという感じで、誰もが魅せられるページだろう。こちゃこちゃと子どもの好きそうなものがたくさんつまっていて、にぎやかなクリスマスにぴったりだ。展開、登場人物の描写がなんとなくエルジェの『タンタンの冒険旅行シリーズ 全15巻』に似ていて、ヨーロッパの空気が流れ、フランスの風がわたっていることにも言及した。
 しかしながらババールの背景にはいつも、ヨーロッパ列強による帝国主義の足跡(あるいは傷跡?)を無意識のうちに感じてしまう。パリで起きたイスラム系移民の暴動を考慮すると、このシリーズも将来問題視されるのだろうか。絵本自体、言ってしまえばブルジョアの産物である。ババールがPIと見なされるなら、歴史の経過として指摘を受けた時点で正すしかない。時代に左右される対象が絵本であり、それは仕方のないことだから。……ババールたちって20世紀の象徴として生き残るキャラクターだとは思うけれど。
 楽しいはずの話題が、何だか辛口になってしまった。何はともあれ、五感を刺激する間口の広いメディア「絵本」から、今後もたくさん「力」を分けてもらおう。静かな1冊の生み出す魔法を、楽しまない手はない。(asukab)

  • 仏語版

Babar Et Le Pere Noel / Babar and Father Christmas (Babar S.)

Babar Et Le Pere Noel / Babar and Father Christmas (Babar S.)

  • 邦訳は英語版と同じデザイン

Babar and Father Christmas (Babar Series)

Babar and Father Christmas (Babar Series)