静かなひとときに

 お昼ね(というよりお夕ね)から目覚めた娘と『ちいさな ろば (こどものとも傑作集)*1を読む。これは、わたしのお気に入りクリスマス絵本。表紙の深紅に描かれたやさしげなろばを目にしたとき、清らかなクリスマスの心が謳われた作品であることはすぐにわかった。実際この直感は裏切られず、出会えてよかったと心から感じる1冊になる。
 考えてみれば純粋な心に素直に浸れるお話って、久しぶりだった気がする。ひとりぼっちのろばがクリスマスの話を聞き心弾ませたこと、うれしい気持ちをサンタさんへのお手伝いに還元させたこと、満たされたイブを過ごしたこと――。どの場面もすうっと心に入り込む流れの中に描かれ、子どもはいつの間にかろばといっしょにクリスマスの朝を迎えるのである。
 こういう気品と美しさを備えた絵本は、人間の品格と同様、意図的に生み出そうとして生み出せるものではない。水彩画の透明感がクリスマスのメッセージを真摯に伝える中、娘は最後のページのリースを指さし、うれしそうな笑顔を見せた。与えることに喜びを見出したろばの姿に、澄んだ鈴の音が似合っていた。(asukab)

ちいさな ろば (こどものとも傑作集)

ちいさな ろば (こどものとも傑作集)