親がしみじみとするクリスマス絵本

 大人の手のひらサイズという小さな絵本『Santa's Last Present』は、ある家族の12月を背景にクリスマスのノスタルジーを描く秀作である。昨年のクリスマス前、ブレイクの軽やかなイラストとサイズの放つひっそり感に魅せられ購入した。書店で手にしたときから何だか「特別な絵本」という雰囲気を漂わせていたけれど、家に帰り家族といっしょに読んでみて、その特別さは増長されたと思う。クリスマスの魔法を、主人公一家が見事に演じている。そう、確かに「小さな劇場で演じる」という表現がぴったりのお話だ。
 ジュリアンは、サンタクロースって誰なのかを知り始める年頃の男の子。うすうす正体は両親と気づいていたが、クリスマスを前に父さんと母さんが何度も「サンタさんへの願いごと」について尋ねるので、今年もう1年、知らないふりをしてサンタクロースへ手紙を書くことにする。お目当ては、いとこのパトリックが持っているのと同じ新型ビデオゲームセット。クリスマスの朝、願いどおりの贈り物を手にするジュリアンだが、ツリーの下に置かれていたもうひとつの包みにも心引かれた。父さんも母さんも知らないという贈り物は、木製の汽車。目がついている、小さな子どもに向けのおもちゃだった。ジュリアンはビデオゲームそっちのけで汽車に夢中になる。
 誰が汽車を贈ったのか――。この答えをめぐり、主人、息子……、みんなでそれぞれの想いを語った。贈り主は両親か、サンタクロースか、あるいは他の誰かなのか、さまざまな憶測が飛び交う。翌年のクリスマスにジュリアンが取った行動も、親ならホロリとしてしまうところかな。ちょっぴり謎めいていて、家族愛がたっぷり詰まっていて……、終幕はクリスマスにふさわしい。子どもの成長って、クリスマスのような季節行事を通して感慨深く確かめられるものだと思うけれど、この絵本はみごとに「親がしみじみする」部分を描き切り、同時に子ども時代の夢を余韻として残してくれる。
 オリジナルは、フランスの雑誌に掲載されたお話。タイトルの通り、そのまますてきな贈り物になる。(asukab)

Santa's Last Present

Santa's Last Present