The Journey That Saved Curious George: The True Wartime Escape of Margret and H. A. Rey ひとまねこざるを救った旅

 親しみあふれる存在に、知られざる過去があるとしたら――。『The Journey That Saved Curious George: The True Wartime Escape of Margret and H.A. Rey』が出版されたとき、純米国製だと思っていたおさるのジョージに激動のヨーロッパを生き延びた背景のあることを知った。ナチス侵攻から逃れるため故郷を後にし米国に渡る作家、アーティストは多く、よく「………生まれ。……年に渡米」と紹介されているのを目にする。このノンフィクション絵本にはその数行に含まれた個人史が当時の写真や物品の紹介を交えて、作者(Margret & Hans Augusto Reyersbach)夫妻への敬愛の念と共に語られている。
 作品は、二部からなる。第一部がアーティスト夫妻の生い立ち、出会いを紹介し、第二部がナチスからの逃亡の旅を記す。二人はともにドイツ、ハンブルグ生まれだが、出会ったのは滞在先のブラジル、リオデジャネイロ。ここでブラジル国籍を取得していたことが、後に命拾いになった。画家、写真家としてチームを組んで広告関連の仕事を請け負い、その後結婚。パリに移り暮らすが、ユダヤ人であることから身の危険を感じ、ポルトガルリスボンを経てリオデジャネイロ、ニューヨークへと移住の旅に出る。
 1940年6月12日。パリ脱出は自転車で。つまり、持ち物は最小限にとどめなければならない。着替えの服と冬のコート、パンとチーズ、肉ひと塊、水、傘、ハンスのパイプ。一抱えの大事な原稿の中には『Curious George Book & CD』の原本となった「The Adventure of Fifi」が含まれていた。
 パスポートの写真、出版社からの手紙など、当時を伝える品々が時代を反映する。ニューヨークに上陸する同年10月14日まで道中おさるのジョージがどんな時間を過ごしたのか、思いを巡らせるだけで時代の叫びが聞こえてくる。(asukab)
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The Journey That Saved Curious George: The True Wartime Escape of Margret and H.A. Rey

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