Be Water, My Friend 友よ、水になれ――若き日のブルース・リー――

 三十二歳で夭逝したカンフースター、ブルース・リーの若き日を伝える絵本『Be Water, My Friend』を読んだ。父親が香港で映画産業に関わっていたことから、彼は幼少の頃からスクリーンに登場している。けれど学校嫌いで、路上での喧嘩に巻き込まれるなどいろいろ問題を起こしたらしい。信念を持って入門したカンフー道でさえ誤った方向に使ってしまい、道を究めるまでかなりの紆余曲折を経た。
 三年前、作者のモチヅキさんから歴史絵本執筆は事実確認に時間を要する、と苦労話をうかがった。当地で開かれたブルース・リー展での資料などがもとになっているというが、実際人間の生きざまを書籍にする作業は、とてつもない重荷を背負う。わたしだったらあまりの責任の重さに、潰されてしまいそうだ。ワシントン大学の卒業生であり今でもよく話題に上る人物なので、その人間像をどう捉えるのか、困難を極める作業ではなかったか。
 絵本では渡米する船上でお話が終り、その後は巻末資料として紹介される。無為の読書家だったこと、家族の反対を押し切って白人女性と結婚したことなど、あまり知られていない事実は興味深いところだ。事実の列挙が続くので、絵本としてより資料的価値が高いかもしれない。
 タイトルの「水になれ」は、自分にも問い続けていたい一言である。(asukab)
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