I Will Hold You 'Til You Sleep あなたが眠りにつくまで

 『I Will Hold You 'til You Sleep』を手にしたとき、二つの感情を味わった。親子の愛情を描く美しい絵本への憧憬と、ヨーロッパ系家族のみを描くイラストが他の文化背景を持つ子どもたちにどう伝わるだろうかという懐疑心と。作品はため息が洩れるほど繊細で美しい。美しいのだけれど、この母子はわたしの中には入り込んでこない。自分のスキーマが、描写対象と合わないことが原因だった。
 絵本と対峙するとき、この居心地の悪さがときどき顔を出す。時代と社会経済的背景と、絵本はどうお付き合いしていけばいいのだろう。子どもの存在は世界中どこでも同じ立場にあり、絵本こそ普遍的な役割を担うはずである。
 こうして問答を繰り返し行き着くところは、「いろいろあっていい」という帰結。さまざまな対象読者が存在するのだから、絵も言葉も表現の仕方も、「子どもにとり安全である限り」、さまざまでいいのである。
 作品には、親の子を想う気持ちが清らかに歌われる。(asukab)
amazon:Linda Zuckerman
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  • まるで子守唄のような絵本。イラストを変えて、他のイメージでも見てみたい

I Will Hold You 'til You Sleep

I Will Hold You 'til You Sleep