クッキーのぬくもり

 娘の「あーー!」という声に、キッチンを覗き込む。わたしも「あーー!」と絶叫。そこに主人と息子がやってきて、「わあーー」。家族に四人に囲まれた子猫のギャビイは「いったい何が起こったの? わたし、何か悪いことした?」。そういわんばかりに、まんまるビー玉のお目目をこちらに向けている。みんなの視線はストーブの上。ギャビイは焼きたてほやほやショートブレッド・クッキーの上に腰を下ろしていた。ここ、あったかいものね。炊飯器の上でくつろぐほどだから、ここにもいい場所ミッケ!の気分で、休んでいたんだよね。
 首をつかまれ、すとんと床に降ろされたギャビイ。まだ、何が起きたのか、きつねにつままれたような顔をしている。ほんのひとときのクッキーのぬくもりが、彼女にとってどれほどのしあわせだったのか。もちろん、知る由もない。