Wind Flyers アフリカ系米国人だけで構成された米国空軍第332戦隊を描く絵本

 『Wind Flyers』は歴史ノンフィクション絵本なのだが、史実を細かく伝えるよりは、登場人物の心情をロマンといっしょに描く詩的な絵本だ。大空を飛ぶ夢を実現した少年の姿が、第332戦隊に所属したおじさんの青少年期と重ねられる。
 巻末に歴史背景の解説があるので、これを読んでからページを開くというのもいい。1941年1月、米国空軍はNAACP*1全国有色人種向上協会)からの要請で、アフリカ系米国人だけから成る第332連隊を結成する。連隊はアラバマ州タスキーギで飛行訓練を行ったことからタスキーギ航空隊と呼ばれ、空軍の中で一機も飛行機を失わずに戦った唯一の連隊としてその功績が高く称えられた。そういえば、ヨーロッパ戦線で果敢に戦った日系人だけの第442戦闘隊も同じような功績を持つ。こちらは米軍史の中で、もっとも功労受章数の多い戦隊として知られているんだっけ。
 などなど歴史をひも解きながら、息子といっしょに読もうと誘ってみると……。彼はタスキーギ航空隊のことをすでに知っていて、うちにはビデオもあると言う。ママは知らなかったよー。
 1、2ページ読み始めたら、「ちょっと待って」と言って、ベッドにもぐりこんだ。空を飛ぶ話なので、ぬくぬく夢見心地で絵を眺めたいのだそうだ。わたしは息子のこういうところが好きだなあ。大空へのロマンに満ちているイラストだから、その気持ちがとてもよくわかった。「(農場の納屋で少年が)柔らかいわらの上に飛び降りるところがすごくいい、僕もやってみたい」と言っていた。(asukab)
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Loren Long | Author | Illustrator

  • 作家はタスキーギ出身。きっと小さな頃から航空隊のことを聞いて育ったのでは

Wind Flyers

Wind Flyers

*1:1909年に結成された、市民権擁護・拡大を目的とした運動組織