Vinnie and Abraham アブラハム・リンカーンの彫刻を制作した女の子の物語
主人公のビニーは、彫刻の才に恵まれていた。若干十六歳で当時の大統領アブラハム・リンカーンの肖像制作に携わったことからも、希代の芸術家であったことが証明されるだろう。このときの彫刻が、後に彼女に大きなチャンスをもたらすことになる。南北戦後、暗殺された大統領の彫像を制作する際、議会の投票で並み居る著名彫刻家を押しのけ、政府公認アーティストに指名されたのだ。年齢は、二十歳そこそこ。人々は彼女の経歴や性別を理由に否定的な見方をしていたが、ビニーは挑戦していく。議事堂内に設けたスタジオを公に開放し、いつでも見学を可能にするなど、新しい気風を送り続けた。
『Vinnie and Abraham』は、若き彫刻家ビニー・リームの若き日々が描かれた絵本である。人々が彼女の「若さ」を見下す中でも、生きがいである彫刻への情熱を失わず、後世に残る仕事の数々をやり遂げた。税金で作品を創作する状況は、自分だったらかなりのプレッシャーだ。お金のかかる舞台でひょうひょうと活躍できる人々が、つくづくうらやましくなる。イチローも、松坂も。
ビニーのような「情熱」って、どうしたら維持できるのだろう。自分の生活を振り返ると、ほとほとエネルギーが残っていないのだもの。ささやかな楽しみはあるけれど、燃えたぎるような意欲は、現在のところ何に対しても存在しない。情熱を維持できる人が世に出て、灯火のような喜びで生き終える人は、それまでなんだろうなあと思った。(asukab)
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