馬小屋のクリスマス

クリスマスの2日目

 聖書をいかにして日常に結びつけるか――。一冊の絵本が生誕物語を通して、教会聖職者たちの苦渋を優しく解いて見せた。『馬小屋のクリスマス』は、「ピッピ」の生みの親リンドグレーンだからこそ描けた現代の生誕物語。
 「クリスマスのこと おしえて」と子どもに尋ねられ、お母さんが語り始めた。母親が描いた情景は、きっと二千年前のヨセフとマリアだったはず。長旅の末、宿を探せなかった2人が馬小屋で嬰児を授かるおなじみのクリスマスの場面だが、耳を傾けた子どもが描いたメンタル・イメージは現代に生きる若い夫婦の姿だった。
 動物たちの体温で体を温め、牛の乳を飲み干し、干草に横たわったマリアが生んだ赤ん坊は、まぶしく輝く星と羊飼いたちに見守られすやすやと眠る。親であれば誰もが胸を突き動かされながら、クリスマスの意味をあらためて確認する光景だ。自分の体験を重ねるとお産を済ませた母子への懸念が覗くのだけど、魔法がかった時間の中に全てが紛れ、満ち足りた想いだけが新しい父親と母親、嬰児を包んでいたのだろう。
 聖なる夜の聖なるできごとを、静かに優しく語った稀有のクリスマス絵本。(asukab)
amazon:Astrid Lindgren
amazon:Lars Klinting

  • 場面を現代に置き換えたコンセプト劇のような生誕物語

馬小屋のクリスマス

馬小屋のクリスマス