Learning to Fly ところでペンギンって、飛べたのでしたっけ

 『リスとお月さま*1以上の作品と聞いていたので、わくわくしながら手のひらサイズの小さな絵本『Learning to Fly』を開きました。
 これは空を飛びたがっているペンギンと、彼を助ける一人の男――作者――による二人三脚の奮闘物語です。ペンギンから空への憧れを知らされた男は一緒に暮らしながら、その夢をかなえてあげようとトレーニングに明け暮れます。体を鍛えるだけではありません。空を飛ぶ本を読み、羽根をつけたり、凧に乗ったりで、さまざまなアイデアを繰り返すのです。そこで浮かんだ疑問が、「ペンギンって、空を飛べたのでしたっけ?」。調べてみると飛べない海鳥ということで、作品のテーマはまさに「不可能への挑戦」だったことが判明します。
 でも、そうこうするうちにペンギンは空を飛んでしまうのですが、その過程にご注目を。昔、ペンギンは空を飛んでいたけれど、「ペンギンは、空なんて飛べない」と言われてから突然飛べなくなってしまったいきさつがありました。そして、最後にまた飛べるようになった、そのきっかけは……。これこそ、この絵本の主題です。「無心」というのでしょうか、「無為」になれたとき、いつの間にか夢に到達していたという、夢のようなお話でした。
 自分の日常にも、そんな「無為」が訪れ、到達できたらいい。そう願っているうちは、夢はまだ果てしない彼方に存在します。
 作者サイトに、ほんとうにペンギンと生活を共にする写真が紹介されていてちょっと感動しました。達者な画力での素描は、まさに日常のスケッチだったのですね。(asukab)
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Learning to Fly

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