Only a Witch Can Fly 今年一番のハロウィン絵本

 去年が"The Haunted House"(米国版"Ghosts in the House!")*1なら、今年は"Only a Witch Can Fly"です。両者ともアジア人アーティストによるイラストなので、ハロウィンにもいわゆる日本風の「ゆるく、かわいい雰囲気」が浸透しつつあるのかもしれません。
 こちらの新作は、デビュー作"The Little Red Fish"*2(邦訳『きんぎょ』)で喝采を浴びた韓国人画家ユウテンによる版画。ハロウィンがテーマですが、明るく笑うオレンジ色は、どこにも見当たりません。くすんだ青磁のようなミスト・グリーンと珈琲ミルク系の茶色などやわらかい中間色を用い、月明かりにひっそりと佇むハロウィンの夜を描きます。というのも、主人公は空を飛んだことのない(魔女の?)少女。ほんのり魔法がかった満月の夜に一所懸命がんばって初飛行を体験するお話なので、やさしい乳白色の月光が不可欠だったのです。ふむふむ、ここまでくると、もしかしたら、『魔女の宅急便 (福音館文庫 物語)』の影響を多大に受けているのかもと思わずにはいられませんでした。作中に描かれた少女の家族は、まさに日本や中国、朝鮮半島など極東(東北アジア)に住む人々の風貌そのものですし。
 けれども、こちらの絵本は絵本で、本当にすてき。"Someday"*3,*4(邦訳『ちいさなあなたへ (主婦の友はじめてブックシリーズ)』)で注目されたアリソン・マックギーによる脚韻詩は、12世紀のフランスに原型をさかのぼるというセスティーナ(六行六連体)のスタイルです。辞書によると、「6行の節6節および最後3行の対句」からなるとのことですが、小さな魔女の修業が中世生まれの詩形に具現されるとは、これこそハロウィンらしさの証明かもしれないと感じました。
 淡い光に包まれた、静かなハロウィン・ファンタジー。お菓子とか、お化けとは縁遠い、こんなやさしいハロウィンもすてきです。
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Only a Witch Can Fly

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