Henry in Love 恋するねこのヘンリー

 寅年2010年を迎え最初に手にした絵本が、こちら"Henry in Love"。やわらかな余白が生きる、ほんのり甘い恋のお話だ。
 主人公たちは小学生で、しかも擬人化された動物ちゃん。顔ぶれとしては、先生が犬。生徒たちは牛、猫、うさぎ……。いずれのキャラクターも寸胴ぽってりの体型に表情は涼しげときており、適度なギャップから生まれる味わいが独特の作風を醸している。作者の奥さまは確かアジア系米国人(コリア系)だったはず。初期の頃から感じさせる透き通った「間」には、やはりアジアの風が吹いている。
 猫のヘンリーの好きな子は、うさぎのクロエ。席替えで隣りに座ることになり、ヘンリーは……。クロエの登場するページには赤いポピーが添えられ、淡い恋心がほんわかと表出される。何と言うか、小学生の日常を(この画風ゆえ)詩的にふっと描き、ストーリーの終わり方も物語の伏線となる大好物ブルーベリーマフィンを用いてぱたんと閉めた。このあたり、まったく米国的ではない。
 動物+小学生+詩的空間の組み合わせが、作者の不思議ワールドを展開する。少し早いけれど、今年のバレンタイン絵本は風流に恋心を描くこちらかな。
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Henry in Love

Henry in Love