イギリスの野の花えほん

　『イギリスの野の花えほん』は、手にするだけで、のどかな田園にたたずんでいるかのような気持ちになれる絵本です。主人公は、つつましく野に根を張り凛と存在感を示す野の花たち。英名から連想するイメージに浸り、まるで野の花といっしょに妖精がそこに棲んでいるような気持ちにさえなっていました。
　やさしい陽光を想起させる表紙の色合いから、思わず春の絵本としてタグをつけてみました。でも、花の季節は春・夏だけではありません。一年中、姿を見せる花があれば、凍てつく冬に心をなぐさめてくれる花もあります。季節を問わず紹介される数は、全９６種類。たんぽぽのようなおなじみの花や、聞きなれない名称の花など、素朴な水彩ペン画で描かれるそれぞれに、野に咲く花の淡い光景を思い浮かべました。花の色でページが分けられているので、それぞれの見開きが個性を持ち合わせ、小さくても芳しく季節を彩る野の主人公たちがおしゃべりしているようにも見えました。
　北米で見かけられる野の花もあるでしょう。なだらかな丘陵地の広がる英国の田園風景に想いを馳せながら、ゆったりと自分の時間を味わうときに開きたい一冊です。娘にも楽しんで欲しかったので原書を求めましたが、原書は現在ペーパーバックのみ（"A Little Guide to Wild Flowers (Eden Project)"）のようです。
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イギリスの野の花えほん