I Know Here 子どもの感性

 カナダ・サスカチュワン州の自然とそこに住む人々を描く絵本"I Know Here"は、子どもの感性そのままの投影だ。暮らしの動脈だった土地の道、トレーラーの学校、かくれんぼをした森、オオカミの遠吠えが響きわたる夜、ソリで滑った丘、大自然に囲まれて生息するムース、鹿、野ウサギたち――。素朴な語りと絵による表現は、雄大な森林地帯の冷たい空気がそのまますっぽり絵本を包み込んでいるかのような印象だった。絵本では、トロントに引っ越すことになった少女が、自分が育った土地の情景を愛着を込めて語っていく。
 作者は子どもの頃、父親の仕事の関係で4つのダム建設地に在住していたそうだ。引っ越しは9回。その間、6つの異なる学校に通ったという。土地の空気がこれほど絵本に乗り移っている作品は、個人的にあまり見たことがない。生活の場は工事現場でもあるから森林が伐採され少し荒涼とした風景も含め、下から上を見上げるアングルやイマジネーションの動き出す活写が子どものまなざしそのままに思えた。同時に、真実の裏付ける強さも感じた。
 今年のボストン・グローブ‐ホーン・ブック賞受賞作品(絵本部門)ということでさっそく取り寄せたのにもかかわらず、こちらもずっと机の上に置きっぱなしになっていた。この賞はここのところ、子どもに寄り添った作品が多くて好き。
http://www.hbook.com/bghb/current.asp
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I Know Here

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