Smile! 大人のつぶやき

　コミカルな主人公サニーの様子から、子どものあどけなさを描く絵本なのかと印象を受けたけれど、ちょっと違った。"Smile!"のページを開いてみれば、それは大人になった人々の、心のどこかに潜んでいる子どもらしさへの探求心を描いているように思えた。無邪気で無垢だった懐かしい日々への旅とでもいえようか。
　これは人生で一番大切なもの――笑顔――を失ってしまった女の子サニーの物語。笑顔がどこに隠れているのか、あちらこちらをさまよい心情を吐露しながらストーリーは展開する。つぶやきの主はサニーなのだけれど、同時にそれは大人のつぶやきでもある。
　サニーのつぶらな瞳がアニメーション風で表紙からはあまりアート志向とは受け取れなかった。でも、なんの！　じっくり眺めてみれば、コラージュ、配色の重ね、描線の妙味……どれを取っても深い芸術性を披露し、アート魂をたっぷりと堪能させてくれる表現である。見ていて単純に楽しい。文字の遊び、色の遊び、線の遊び、すべてが今様だ。この手の絵本はもちろん、英国の絵本ということになる。
amazon:Leigh Hodgkinson

Smile!