The Bald-Headed Princess 小児白血病を克服するまでの物語

 "Bald-Headed Princess: Cancer, Chemo, and Courage"は、小児白血病を克服する11歳の女の子の物語。教師である作者は実際、11歳の息子を同病で亡くしており、家族とともに体験した自らの想いを白血病への理解も含めて文章に託した。
 冒頭は、白血病に侵されている事実を知った状況から始まる。天性の運動能力を授かり、サッカー・プリンセスと呼ばれていたイザベルは、チームの中心的存在。いつものようにピッチを走り抜けていた試合中に突然、鼻血を出して倒れ、病院で白血病と診断された。
 その後は、わたしは読み進められなかった。主人公は少女だが、作者の息子クリスくんの言葉が、一人称で、あちらこちらに散りばめられている。スター選手だった彼の闘病生活が、家族や医師との会話、丸坊主にした頭をかばう場面などすべてに反映されている。
 昨年だったか、娘から「キャンサーって何?」と聞かれたことがあった。だから本書のタイトルを見て即、娘のために借りてみようと思った。読み終えた彼女は、小児白血病について治癒の可能性が高いことを教えてくれた。大人が白血病になると治りにくいとも。
 ちょうど時期同じくして、7月にマリナーズからレンジャーズに移籍したクリフ・リー投手の息子さん、ジャクソンくんが小児白血病のサバイバーだと知った。ジャクソンくんは小学2年生か3年生ぐらいだろうか。リー投手はインディアンズ時代の2008年に22勝3敗の脅威的な数字を残し、サイ・ヤング賞を受賞している。それ以前は、期待されながらあまり目立たない存在だったのが、この年から突然、生まれ変わったかのような投球を見せ始めたのだった。非常に個人的で拙い憶測なのだけれど、もしかすると闘病の日々が本人の気持ちにも反映されていたのかなと、親として連想せずにはいられなかった。その背景から自ずとリー一家は小児白血病患者への支援に熱心で、数多くの慈善活動に出資している。
 「子どもの死は悲しい」と主人がつぶやいた後で、娘が大人の死とどう違うのか尋ねた。「短い命だからこそ、悲しいんだよ」と言うのが答えだった。命の尊さが身に染みた。

  • 作者はノンフィクションとして、クリストファーくんの闘病記も執筆している

amazon:Maribeth R. Ditmars

Bald-Headed Princess: Cancer, Chemo, and Courage

Bald-Headed Princess: Cancer, Chemo, and Courage