Dave the Potter: Artist, Poet, Slave 奴隷の陶芸家デイブ

 表紙を見て震えのくる絵本というのがたまにあり、"Dave the Potter (Carter G Woodson Honor Book (Awards))"はまさにその種の一冊だった。陶芸家で詩人で奴隷――この三言を耳にするだけですでに、思考は二百年前の米国南部に飛んでいる。
 奴隷は読み書き禁止の1800年代サウス・カロライナ――。法を破れば命が危険に晒された当時、鍛冶や陶芸といった技術修得は、ほんの一握りの奴隷たちに許されていた。その一人がデイブ。状況の許す極限下で、彼は密かに文字も学んだようだ。
 恵まれた星のもとで生きたデイブがいつどこで生まれ、どんな生涯を送ったのかはほとんどわかっていない。われわれはただ、残された壷とそこに刻まれた言葉から、彼の人間性と暮らしぶりを読みとるしかない。だからこそ、茶褐色に光る陶芸の数々と息を潜めて書かれたであろう言葉は見る者を圧倒し、とてつもない存在感を携えて今日に迫る。
 質感あふれる表相には、俳句的な詩想をうかがわせる言葉が続く。この彼の言葉に相応しく、絵本も詩を語るようにデイブの生き様を紹介する。そして、このコリアーの絵。コラージュを連ねた重厚な作風は、本作でもどっしりと根幹を伸ばし人間の尊厳を主張する。
 カダイア・ネルソンとブライアン・コリアーの表現力には、いつも感服するしかない。
 本日教会のキッチンにて、恒例の聖ニコラス日礼拝用クッキーを焼く。固いクッキー生地をこねる際、デイブが土をこねる場面を想像していた。隣りのホールでヨガ教室が開かれていたので、みな寡黙に作業。もくもくと聖ニコラスの模りに生地を押し込んだ。

Dave the Potter (Carter G Woodson Honor Book (Awards))

Dave the Potter (Carter G Woodson Honor Book (Awards))

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