英国のお庭

 夏らしくなったら読もうと思っていた『きいろい家』(原書『The Yellow House』には、英国の家、庭のプライベートでひっそりとした魅力にあふれている。そこで女の子が体験するファンタジーには、とら、いるか、へび、ペリカンパンダといった動物が登場し、子ども心をくすぐる魔法がいっぱいだ。お母さん、赤ちゃんの妹といっしょに出かけた散歩でのできごとという設定も身近でいい。ふと自分にもありそうなことだと思えてくる。
 このお話の一番のキャラクターは、庭で「ねえ、ねえ、おいでよ。見においで!」と女の子を誘う小さな男の子。赤い帽子をかぶり、赤い靴をはき……、これは庭に置かれている石の小人さんと同じいでたちだ。「ぼく、男の子は小人と思う」とは、いっしょに読んだ息子のひとこと。娘はページを戻しながら、庭の様子を何度も確認していた。
 大好きなクレイグのイラストは、今回は銅版画。落ち着いた叙情的な雰囲気がたっぷりだ。わたしは庭の敷石の小道がドロップの小道ように見え、『スイミー―ちいさなかしこいさかなのはなし』のドロップみたいな岩や、『はらぺこあおむし (偕成社・ボードブック)』見返しのカラフルな丸のイラストを思い出した。色がたくさんあると、子どもってワクワクしてきちゃうんだよね。夏、お散歩のときに読むと、空想が広がる作品。「きいろい家」というタイトルからゴッホにまつわるお話かなと思ったけれど、画家とは全く関係がなかった。英国らしい建物と庭のたたずまいに魅せられ、わたしのお気に入りになっている。(asukab)

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