宇宙的な発想の地理+アート(仕掛け)+歯の絵本

 米国で絵本『Madlenka』が発売されるや否や、新聞各紙、書評誌はピーター・シスがまたやってくれたと言わんばかりに、一斉に大絶賛。欲しいなあと思っているうちに、マドレンカシリーズ第2弾の邦訳『マドレンカのいぬ』まで出版され、結局うちでは犬のお話のほうを先に買い、本家本元は後になってしまった。
 趣向は両者とも似ている――仕掛け、芸術的で緻密な描写、宇宙的な空間の広がり、文化の多様性をたたえる街角の設定。どちらも、ため息がもれるほど美しい。
 第1弾『マドレンカ』では、歯がぐらぐらして抜けそうな女の子マドレンカが喜び勇んで街中に知らせにいくお話で、街に暮らす人々が順に紹介されていく。彼らはみな、世界中からこの街に移り住んだ人たちばかりなので、国際色豊かな文化背景が楽しめる。
 いろいろ詰め込まれて欲張りな絵本ではあるけれど、どの視点からも完成された「美」を見ることができ、驚異的な芸術性だと思った。フランス、インド、イタリア、ドイツ、ラテンアメリカ、エジプト、チベットに思わず旅したい衝動に駆られてしまう。マドレンカの歯のおかげて、世界旅行ができちゃう絵本。まだ先のことになりそうだけど、娘の歯がぐらぐらし始めたら読んであげよう。(asukab)

マドレンカ

マドレンカ