小さくて風流、雅の世界

 おやゆびこぞう、おやゆび姫と小さな存在に魅せらている娘にぜひ読みたいなと思っていたのが日本昔話『いっすんぼうし (日本傑作絵本シリーズ)』。都の春が美しい日本画で描かれるので、桜の季節に読んでおきたかったけれど。とにかくイラストがすばらしい。ぼかしと重ねの色合いが都の風雅そのもので、これ以上この作品に似合う絵は今後出ないのではと思えるほどだ。
 それは日本語にも言える。よく知られたお話は、こういう素直に心に響く言葉で語り伝えたい。ただでさえ日本語のあやしい娘には会話を中心に多分わからない表現が多かったと思うけれど、それでも場面の様子を楽しみ、雅の世界に入り込んでいた。「まめまめ(忠実忠実)しい」「かいがい(甲斐甲斐)しい」など、わたしにも新鮮な表現があり、とてもありがたかった。
 いっすんぼうしのサイズは、例によってとても気になっていたようだ。小さなものって、大きなものと同様に子どもを魅了する。お椀のかさ、お箸のかい、針の刀……など、想像するだけでわくわくするみたい。『ジャックと豆の木』のときは自分が巨人になり、紙のリボンをつなげて作った豆のつるを庭の木に巻きつけていたし、自由自在にイマジネーションの世界に浸れるのが心地いいのだろう。「あのお話(いっすんぼうし)、大好き」と息子の野球の試合に向かう途中、嬉しそうに話してくれた。
 もっともっと、昔話を読んであげようと心に決める。いつも原書と翻訳絵本が中心なので、読んでいる途中、「これ、ジャパンのお話?」と聞かれてしまった。(asukab)