傘の思い出

 息子の好きな雨の日の絵本は断然、こどものとも012創刊年の7月号『かさ さしてあげるね (0.1.2.えほん)』だった。ぞうさん、きりんさん、ありさん、くまさんの背中に降る雨の音はみんな違い、それらはそれはそれはすてきな音。「ぴっちゃん ぱっちゃん」「ぴろりん ぽろりん」「ぴぴ ぽぽ ぴぴ ぽぽ」「しっぽ しゃっぽ」……。1歳半の息子は「音」もそうだっただろうし、動物たちの開く、サイズの違う「傘」の存在にも随分魅せられていた。
 たくさんの傘を広げて自分だけの小さな世界を作る傘遊びは、このときから始まった。傘って一瞬で形が変わるし、おまけに小さな子どもにしてみたら、普段あまり見かけない不思議な形をしている。あっという間に別空間を作り、その中では好きなことができちゃうしね。こんなところが、彼を夢中にさせた傘の魅力だったのかな。傘遊びは小学校に入学するくらいまで? かなり長く続いたと思う。最後の方ではシーツを使い、上からかけたり、壁にテープで貼り付けたりして、大規模な基地作りに熱中していた。
 長靴姿で傘を持ち、雨の日に外遊びしていた小さな頃の息子の姿がよみがえる、個人的に思い出いっぱいの絵本。(asukab)