むしむし暑い夏は、まだだけど

 前庭に交互に並ぶりんごとさくらんぼの木、計4本――夏は果実三昧の季節である。さくらんぼの木には黄色い実が膨らみ始め、娘は手に届きそうなところに付いた実を指さし、「この実を1番に食べる」と宣言していた。その前に鳥たちに食べられなきゃいいけど。今年のりんごのできはどうだろう。このりんごの木には、毎年どっぷりお世話になっている。アップルソースに始まり、りんごのケーキ、パイ……。8月のキッチンはフル回転という感じだ。マーケットにベリー類が大量に出回り始めると、「夏」の到来となる。
 ベリーの季節はジャム作りの季節ということで、娘といっしょに『ジャイアント・ジャム・サンド (えほんライブラリー)』を読む。この絵本には、わたしも小さな頃随分魅せられた。400万匹の蜂に襲われた村が村民総出で蜂退治に乗り出すお話で、巨大な食パンを焼き上げ、ストロベリージャムサンドを作るまでの過程が迫力いっぱいに描かれる。遠近法が巧みに取り入れられていて、作業に汗を流す人々の向こう側で蜂に追い回されている人がいたりと、横長見開きのイラストには見どころがいっぱい。パン生地をこねるページでは、塩ふりでぱらぱらと塩を振りかけている奥さん方がいるかと思えば、どさっと箱ごと入れている人、生地の中に埋もれてしまった人の手が見えていたり、クリケット用のバットを使って奮闘している人がいて……と、このあたりは息子が大好きなユーモアだ。こういうクローズアップと全景両者で楽しめる絵本って、必ず子どもの心をとりこにする。
 冒頭で「むんむん、むしむし あつい なつ……」とあるので、娘に夏真っ只中のお話だと話すと、登場人物たちが(半袖の人もいるけれど)長袖を着ているとの指摘。う〜む、これは英国の絵本。英国の夏は当地と同じでさわやかなんだよと話したけれど、何やら不思議そうな顔をしていた。わたしも、夏でも木陰や家の中は涼しいから長袖着たりするし……。それよりも、英国は紳士の国だから、しっかり上着を着るという理由の方が妥当のような気もする……。
 子どもたちの夏休みがすぐそこかと思うと、わたし自身も夏の計画を具体的にしなければとはやし立てられる。今のところ予定としては、娘の部屋のペンキ塗り、息子の小学校卒業記念CD制作など。CDにはサクソフォン、バイオリンの演奏に加え、お話の朗読も入れようと思う。これは、彼が声変わりする前に絶対しなければと思っていた。わたしのリクエストとしては、英語は思い出の「がまくんとかえるくんシリーズ」から。日本語は『スイミー―ちいさなかしこいさかなのはなし』か『スーホの白い馬 (日本傑作絵本シリーズ)』がいい。

The Giant Jam Sandwich (Sandpiper Book)

The Giant Jam Sandwich (Sandpiper Book)