知っている人がたくさん、ゆかいな仕掛け絵本

 子どもたちのお気に入りに「ゆかいなゆうびんやさん」シリーズがある。このシリーズには、マザーグースの童謡やグリム童話などの登場人物が一挙に勢ぞろい。郵便屋さんが、彼らに手紙を届ける。子ども心をウキウキさせるのは、よく知っている登場人物たちに加え、手紙を取り出すという仕掛け。英語は韻を踏んでいるから(邦訳にもそれは反映)、子どもが喜ばないはずのない保証付きの楽しい絵本である。
 シリーズの1冊目『ゆかいなゆうびんやさん―おとぎかいどう自転車にのって』(『四季の絵本手帖』春の23ページ、6月17日参照)を息子といっしょに読んだときの、彼のうれしそうな顔は忘れられない。「これ、楽しい〜」を何度ももらし、ニコニコ顔で手紙を取り出していた。2冊目『ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス』は、さらに感動。これは時間のあるときに読むのがいい。冬休みは、この1冊で十分楽しめるほどのボリュームがある。最後の『ゆかいなゆうびんやさんのだいぼうけん』は、娘が大喜びした1冊。これには虫眼鏡が付いていて、小さくなった郵便屋さんといっしょに小さな世界を見て回る仕掛けになっている。わたしは最初の2冊が優れものと思ったけれど、彼女はこの大冒険が一番のお気に入りのようだ。小さい+大きい世界に魅せられている彼女の好みの反映かな?
 こういう既存のおとぎ話などを踏まえて描くやり方は、英語の絵本にはよく取り入れられる手法。日本の本にはこの手法は少ないと感じているけれど、その理由は何だろう。子どもにとって(きっと誰にとっても)、「あ、これ知ってる」というときの気持ちって、興奮に満ちていて嬉しいものだ。この絵本を開けば、かつて読んだもの、親しんだものの中からさまざまな記憶がよみがえってくる。作品と作品のつながりが楽しめる、愉快な仕掛けの手紙絵本。(asukab)
シリーズ1で登場するのは……

ゆかいなゆうびんやさん―おとぎかいどう自転車にのって

ゆかいなゆうびんやさん―おとぎかいどう自転車にのって

シリーズ2で登場するのは……

  • 3匹のくま一家+赤ちゃんぐま、金髪の女の子+妹
  • 3人のヴァイオリン弾き
  • お皿とスプーン
  • 7人の小人
  • 赤ずきんちゃん
  • ハンプティ・ダンプティ
  • しょうがパンぼうや
  • 3匹のこぶた+おおかみ
  • サンタクロース夫妻と小人たち
  • 赤鼻のトナカイさん

ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス

ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス

シリーズ3で登場するのは……

Jolly Pocket Postman

Jolly Pocket Postman