にわとり、ぎゅう詰め

 仕事の帰りのこと。ダウンタウンの渋滞がひどく、普段なら10分もかからないところが1時間もかかってしまう。のろのろ進んだり、止まったりしていた際、ふと隣りの斜線に目をやると、なんとにわとりの大群をつんだトレーラーが並んでいた。それは、まるでにわとりの壁。にわとりの入ったかごが、上から下まで全10段。1かごに10羽×3かごを1段として、全部で6列だから、つまりこれで1800羽。トレーラーは2連なので、ざっと見たところ3600羽のにわとりがかごに詰められ、灰色のビル街の渋滞を進んでいた。よく見ると、寝ているのがいたり、隣りをつついているのがいたり、バタバタしているのがいたり、無表情なのになぜか表情豊かで思わず噴き出してしまう。これは誰が見ても笑える光景だと思うな。絶対子どもに報告しようと、その数を見積もってしまったくらい。即、思い起こしたのが『おしゃべりなたまごやき (日本傑作絵本シリーズ)』。あそこに描かれていたぎゅう詰めのにわとりの姿は、まさにこれだろう。そう思うと、また笑いがこみ上げてきた。渋滞のおかげで、しばらくにわとりたちに目を楽しませてもらった。これがみんなチキンとなって食卓に並ぶんだなあと思うと、生き物の悲しさも感じられたけれど。
 家に戻り夕食後、さっそく壮観な光景をイラストに描いて、娘にぎゅう詰めのにわとりの話をする。「こっこっこっこ(英語だと、ぷぉっぷぉっぷっくぷっくという音)……」と2人で声を出しながら。前述の絵本を見せて、こんな感じだったと話し、読もうとしたけれど、この作品は娘の日本語力じゃちょっときついかな?ということで、急きょ『ひよこのかずはかぞえるな (世界傑作絵本シリーズ)』に変更。これは、めんどりの産んだ1個のたまごからどんどん人生の夢をふくらませてしまうおばさんのお話。こちらはしっかり楽しめた。
 この後は、ロージーときつねごっこ。要するに『ロージーのおさんぽ (ハッチンスの絵本)』を真似たおにごっこなのだが、結構いい運動になるので娘に感謝。
 今後チキンを料理するたび、間違いなくあのぎゅう詰めのにわとりの姿は思い出すことだろう。(asukab)

おしゃべりなたまごやき (日本傑作絵本シリーズ)

おしゃべりなたまごやき (日本傑作絵本シリーズ)

 子ども時代の思い出の絵本。弟といっしょに、よく読んでもらっていた。子どものような王さま、にわとりの大群、黄身の秘密……とにかくおもしろくて、ページを開くたびに夢中になっていた。

ロージーのおさんぽ (ハッチンスの絵本)

ロージーのおさんぽ (ハッチンスの絵本)

 おさんぽに出かけるめんどりロージーと、彼女を狙うきつねの、ユーモア劇場。おとぼけロージーと悲哀たっぷりのきつねの、絶妙な間合いが見もの。