夏の秘密はここにあり

　２か月半も夏休みがあると、何をするのかしっかり計画を立てないと時間はただただ過ぎていく。宿題帳のあった自分の夏休みですら何もしない時間は多かったから、宿題のないこの国の子どもたち（いや、むしろ親？）は、かなりの自己管理能力が求められる。学校からは、読書が奨励されるだけ。公立図書館で読書プログラムが始まるけれど、これは自由参加である。息子はとりあえず２つの音楽キャンプと、サッカー、空手のキャンプ、娘は２つのアートキャンプに参加する予定。とは言え、自分だけの時間と空間を所有できるぜいたくは、夏の特権でもある。
　小さな子どもの夏ということで思い出すのは『あなただけのちいさないえ』。これは、自分だけの居場所を持つ子どものわくわくした気持ちを美しいイラストとともに表した詩の絵本。机の下、傘の陰、箱の中、部屋の片隅……、そうそう、小さな子どもってこういう場所が大好きだ。息子や娘の幼ない日々の面影が、ぽっと浮かんでくる。カラーは表紙だけで、本文は青いインク、イラストは黒のペン画というのが、懐かしさをかもし出しているのかな。初めて読んだときは、これは自分の「夏」そのものであるとも感じた。　

ひとは　だれでも、
そのひとだけの　ちいさないえを　もつひつようがあります。

　自分もそんな場所で、自分だけの時間を過ごすのが好きだったな。小学生になってからも。小さな空間だけど、そこは開放感に満ちた場所だった。
　最後の言葉がまたいいのだ。

そして、もし　あなたが、だれかの　
ちいさないえのそばを　とおるときは、
わすれないでいてください。

とても　れいぎただしくすることを、

そっと　あるき、
おだやかに　はなすことを。

　この気持ちが理解できれば、人は幸福な一生を送れると思う。子どもたちには、楽しくて自分の居場所がたっぷり味わえる夏休みを過ごして欲しいなと願う。(asukab)

あなただけのちいさないえ