不思議なナンセンスの世界

 絵本は子どもの頃から大好きだったけれど、『ぼくのくれよん (講談社の創作絵本)』に出会ったときの衝撃は今でも忘れない。ページをめくるたびに思いも寄らないものが飛び出してきて、ビックリ箱のような絵本だと思った。後でこれを「ナンセンス」だと知る。
 このクレヨンは、誰のクレヨン? 「にゅ〜」っとへびのような鼻の出てくるところで、わくわく、ぞくぞく、もういちころだった。この後は、自由自在のナンセンス・ワールド。クレヨン、動物、池、バナナ、火……子どもの興味の対象が意外な形で登場し、これは引き込まれないはずがない。あっという間に、わたしの絵本トップ5に。これぞ絵本!という「間」と「意外性」は、他には見たことがないもの。
 子どもは最後の虹のリボンが大好きだ。日本では7色揃わないと虹とは呼ばないかもしれないけれど、こちらでは色のラインが数本並ぶだけで(しかも、順番はめちゃくちゃでも)一般的に子どもたちの間では虹と呼ぶ。虹を描きながら駆け出す最後のページには、夢と希望がいっぱいつまっている。
 長新太さんに謹んで哀悼の意を表します。(asukab)

ぼくのくれよん (講談社の創作絵本)

ぼくのくれよん (講談社の創作絵本)