3羽の子ども心

 日々の中で心ときめく瞬間といえば、注文していた絵本の包みを開けるとき。『よるのおるすばん (児童図書館・絵本の部屋)』は、この冬受け取った包みの中の1冊だ。(米国的ビジネス戦略を目の当たりにしているけれど、アマゾンの存在には心から感謝。)
 これは息子のプレスクール時代、クラスの子どもたちの間で人気を博していた絵本。彼の友だちがこの絵本の大ファンで、毎日のように学校に持ってきてはサークルタイムで読んでもらっていた。ページを開けば、子ども心を魅了する理由がよくわかる。
 ふくろうの小さな兄弟たちが夜、目を覚ますとお母さんがいない。フーちゃん、ポーちゃん、ピヨちゃんの3羽は1羽ずつ気持ちをつぶやくのだが、素直な一言がリズムに乗って暗やみに響くところは、子ども、大人関わらず誰をも魅了する場面だろう。このとき「こわい」という一言はどこにもない。「こわいよ〜」とは、よく出てきそうな表現だけれど、安易に発していないところが品のある描写のうまさかな。母親が戻るまでの気持ちは静かな森を背景にして、清らかな調べのように流れていく。特にピヨちゃんの一言は子どもの気持ちを代弁していて、ちびっ子読者がこの絵本を熱愛する理由そのものといえる。もちろん娘も、ピヨちゃんの大ファンになった。
 マーティン・ワッデルって、幼い者の気持ちをそのまま汲み取れる作家である。彼の他の作品もみなそうだ。シンプルに原点を描く姿勢は、英国の絵本に共通する特長のような気がする。米国の絵本のように複雑な事情やエンタテイメント性を含ませなくても、そのままを描いて絵本として成り立つのだ。小さな子ども向けの絵本だから、今ではハードカバーよりボードブックの方をよく目にするかな。この絵本を持っている赤ちゃんは、よく見かけるものね。(asukab)

よるのおるすばん (児童図書館・絵本の部屋)

よるのおるすばん (児童図書館・絵本の部屋)