お誕生日絵本カウントダウン#7

 7日目は、『ぼく、お月さまとはなしたよ (児童図書館・絵本の部屋)』。息子が小さかった頃、図書館に行けば必ず手にしていた作品だ。英語では他にもシリーズでたくさん出ているけれど何てったって最初のこのお話が1番! 小さな子どもにとって「月」は不思議の対象だし、「やまびこ」の自然現象も心引かれるところだと思う。両者の魅力を利用してクマくんの純粋な気持ちを表す趣向に、わたしはただただ感心していた。
 ある夜、お月さまに誕生日のプレゼントを贈りたくなったクマくんは、川を渡り、森を抜け、山に登ってお月さまに近づき話かける。「こんばんは!」「こんばんは!」、「たんじょう日、いつですか。おしえてください」「たんじょう日、いつですか。おしえてください」……やまびこの部分は、読むのが楽しい。……「たんじょう日に、なにがほしいですか」「たんじょう日に、なにがほしいですか」、「ぼく、ぼうしがいいな」「ぼく、ぼうしがいいな」――。
 こうしてクマくんはプレゼントを帽子に決めるわけだけど、ここに至るまでのやりとり(……と言っても、クマくんひとりだけ……)には彼の清らかな気持ちそのものが描かれ、それだけにたったひとりで丁寧に話しかける姿は読み手の心をとらえて離さない。イラスト全体から――不思議なもので、たとえ昼間の描写でも――月のまろやかな輝きが感じられて、友だちを思うクマくんの無垢な心をやさしく包み込んでいる感じがする。これが、この絵本のマジカルな秘密かな。
 子どもの頃の「月」といえば、走ればいっしょに着いてくるというのがイメージのひとつ。「ブランコに乗ると、お月さまもいっしょに揺れている」と娘が真剣に話してくれたけど、それも不思議な「月」の存在だね。……などど話しながら読み始めたら、いつの間にか息子もやってきて静かに加わった。この絵本、大好きだったものね。
 最後に。邦訳のタイトルには「お誕生日」をそのまま入れるほうがいいとあらためて思った。原書は新しいイラストで改版されたけれど、オリジナルのしっとりとした深い色調もなかなかいい。(asukab)

Happy Birthday, Moon (Moonbear)

Happy Birthday, Moon (Moonbear)