アートの世界#3

 アート続きで『Seen Art?』を読む。シェスカ&スミス・コンビの最新作。算数の『Math Curse』(邦訳『算数の呪い (世界の絵本コレクション)』)、科学の『Science Verse (Golden Duck Awards. Picture Book (Awards))』に次いで登場したのはアート。3冊はどれも作者の教師としての目が生きている作品で、科学好きの息子は第2作に登場する童謡をもじった言葉・詩の遊びに魅せられた。アートはこの5月に出版されたばかり。これは表紙、タイトルからしてわたしが宙に舞う絵本である。シンプルな展開の中で、ニューヨーク現代美術館(the Museum of Modern Art, New York、略称MoMA)の美術品が紹介される。
 作者たちの言葉遊びや発想のユニークさは、このアート絵本でも留まるところを知らない。主人公の男の子は友だちのアート(Art、男の子の名前)を探しにMoMAに入り込む。「I'm looking for Art.」の一言を通して友だち探しと芸術探究の両者が重ねられ、読者は第3者として鑑賞ツアーに便乗できる趣向だ。ゴッホの「星の夜」あり、モネの「すいれん」あり、ウォーホールの「キャンベルスープ缶」など有名な作品がさりげなく姿を見せる。横長の装丁が館内を歩いて進んでいるような雰囲気を醸し出し、会話のレイアウトと合わせて、考えて作られているなと感心した。判が少々小さいので当然絵画も縮小収録されてしまうところが玉に瑕だけど、実際ガイドとしてニューヨークに持っていくことを考えたら、このサイズはぴったりかもしれない。
 アート絵本はたくさん出ているが、わたしの中ではこの作品は五指に入れたいな。ただの鑑賞ではなくてストーリーになっているところが何てったって1番の魅力だろう。巻末には未掲載の美術品を含めた作品解説が付く。
 娘は、名前と芸術の「アート」を混同することなく楽しんでくれた。ひとつひとつの美術品を時間をかけて見ていくと、ゆったりと大きな満足感が得られる。この、たっぷりと満ちたりた気持ちがアートを見た証明になる。(asukab)

Seen Art?

Seen Art?