夏のひそかな楽しみとなる絵本#1

 夏に読みたいなあと思っていた絵本『はちうえはぼくにまかせて (世界こども図書館A)』を娘と読む。このタイトルは、主人公トミーの気持ちである。トミーは何がきっかけでこのアイデアを思いついたのだろう。夏休みの間、旅行に出かける近所の人たちの鉢植えを世話することにした。1日1鉢2セントで。かわいいなあ。一生懸命世話をするトミー、たくさんの植木が気に触るお父さん、静かに見守るお母さん……、鉛筆で描かれる家族の表情が見どころの絵本。もちろん、緑に囲まれた夏休みはジャングルみたいで、それはそれはすてきだ。娘は、トミーが植木の手入れに熱心になるあまり夢にうなされてしまう場面に興味を示す。ここでは、伸びすぎた植物をどうしようかと苦心するトミーの気持ちが、ちょっぴりエンタテイメントのような形で描かれる。
 仕事をやりおえたトミーの誇らしげな笑顔が晴れ晴れとしていてとってもいい。自立って、こういうことなんだよね。親なら、いつも子どものこの笑顔を見ていたい。最後にお父さんと気持ちを共有できたところがめでたしめでたしで、子どもの満足感は倍になる。
 植木ではないけれど、うちでは小さな畑の収穫が始まった。水くれは主に息子がやっていて、娘はその享受にあずかる。以前やりたいと言っていた『うえきやのくまさん (世界傑作絵本シリーズ―イギリスの絵本)』のような屋台は無理なことがわかり、とれたお豆はサラダに入れることになった。そう、売るほどの量はとれないんだよね。
 膨らんで硬くなったさやを開くと、中には丸々と太ったお豆の列。「うわあ、すごい、ぴかぴか」の歓声――。薄緑色の球形に表情はないけれど、これはどう見てもコロコロと笑っているよね。薄皮に包まれたすべすべのピーをぽいっと口に放り込むと、生でも甘い。トミーが体験したように、自然が身近になる夏には、ひんやりとした緑色の喜びがあちらこちらに隠れている。(asukab)

はちうえはぼくにまかせて (世界こども図書館A)

はちうえはぼくにまかせて (世界こども図書館A)