夏のひそかな楽しみとなる絵本#8 動物たちの芳しい夏

 自然と動物の生活を表した英国のお話はたくさんあるけれど、中でもこれを絵本『むぎばたけ (日本傑作絵本シリーズ)』に仕立てた心眼はすごいと思った。月、星、麦畑、風――言葉と淡い水彩画から感じられるイメージが、芳しい夏の夜を美しく描く。息子はハリネズミノウサギのジャックじいさん、川ねずみのキャラクターが大好きで、彼らのしぐさの描写や会話部分を読んでもらうたびにクスクス笑いをしていた。動物好きの彼のこと、きっと生態系を守る大切さを感じながら聞いていたんだろう。彼らのはなうたに耳を傾ければ、自然に即した生き方をいつまでも大切にしたいとわたしも思う。
 自然を大切にするって、どういうことか――。うちでは、ごみを出さない、無駄を無くす、簡素な生活を心がける――と理解しているけれど。シンプルな生活って実現できると気持ちいいのだが、社会的にまわりと合わないという点が唯一弊害かな。世の中は、消費社会で回っている。
 ときおり果てしなく広がる麦畑の波の音、風の温度、匂いをむしょうに体感したくなる。月明かりと麦畑の風――これさえあれば何もいらない……の心境になる。(asukab)