小さな子どもの心に入り込む『Russell the Sheep』

 ニューヨーク・タイムズ紙に載っていた『Russell the Sheep』を読む。書店で手にしたときは、ホールマークのグリーティング・カードみたいなイラストだなあ〜という印象。でも、色合いはなかなかいい。1人で就寝する欧米の子どもたちにとって、ベッドタイム絵本は大切な存在。1分野として存在するほど多く出版される状況下で、この絵本はずっとトップ10入りしていたからきっと何かあると見た。英国の絵本が米国で出版されることは、つまり内容は保証済みということか。
 羊のラッセルはなかなか眠りにつけない。帽子をかぶってみたり、枕を使ってみたり、いろいろ試してみるけれど目がさえてしまう。寝る場所をおんぼろ車のトランクや大木のうろに移してみたけれど、うまくいかなかった。果てには星や羊の数を数え始め……、最後に1番大切なことを思い出した。それをやり終えると、ラッセルはすうっと眠りに誘われて、ぐっすり。
 最後の「大切なこと」は、大人にしたら「な〜んだそんなこと」で終わるかもしれないけれど、小さな子どもにはたまらないだろう。子どもはこれを確かめながら毎日を過ごしているのだし。なるほど、人気の秘密はここにあった。数を数えるところも楽しい。ほんとうに数に魅せられるものねえ。
 息子は羊たちの住んでいる原っぱの名称(Frogbottom Field)に受けながら、ラッセルがいろいろ試す過程のお茶目なイラストが好きと言っていた。わたしは前述のように、やはり色調。抑えた青系+グレーが甘くならない夢見心地の雰囲気を漂わせ、色だけに注目したら大人の趣向かも。赤ちゃんからプレスクールの子どもたち向けの愉快で安らぎいっぱいのおやすみ絵本。(asukab)

Russell the Sheep

Russell the Sheep