万華鏡の思い出

 娘の2回目のアート・キャンプが終わった。今回は、万華鏡やガラス細工の小さな置物、アクセサリー作りをした模様。万華鏡はちょうどポテトチップスが入っているような円柱を利用しての製作で、子どもたちの小さな手が太い筒を抱えながら不器用に回すしぐさが可愛らしかった。穴から覗けば、ピンク、水色、赤の透明おはじきと、恐竜や三日月、ハート、花型のきらきらしたコンフェッティが六角形の美の世界を創造する。「どうやって、作ったの?」「きれい〜」と歓声を上げると、娘は一生懸命説明してくれた。中に陣取っているのは、分厚いガラス3枚。このガラスの成す三角柱が幻想的な模様を作り出すんだね。緑色の恐竜が頭を持ち上げたり、銀色の三日月があっちにもこっちにも出てきたり。
 万華鏡といえば、昔夏休みの工作で父といっしょに作った思い出がある。「いっしょ」というよりも美術好きで器用な父だったから、自らがどんどん進めてくれ、わたしはただその工程をじっと見ていたに過ぎなかったのだけれど。父作の万華鏡は、まわりが赤い千代紙で飾られていた。「お子さんの作品じゃなくて、お父さんの作品ですね〜」とは、毎年のように父が担任の先生から言われていた皮肉である。でも、子どものわたしからすると、父といっしょに過ごした時間だけでも万華鏡のような美しい宝物だった。ガラス屋さんでガラスを切ってもらい、それをテープで張り合わせ、細かく紙を切り……、子どもはそんなことでも興奮してしまうのだ。
 さて、万華鏡ときたので、読んだ絵本は『My Many Colored Days』(邦訳『いろいろいろんな日』)。父の影響で小さな頃から「色」に魅せられているから、わたしは色をテーマにしたアート風の絵本には目が無い。24色とか36色、48色……など、クレヨンや色鉛筆は使うよりも、取り出して眺めたり、順番を変えて並べたりするなどの時間の方が長かったかもしれない。クリスマス・プレゼントに、サンタさんはよく画材をプレゼントしてくれたっけ。だからわたしの「色」に対する意識は、他の抽象物とは別格の扱いになる。
 この絵本は、表紙からして万華鏡を想起させる。黒一面に大小さまざまな正方形の窓が切り抜かれ、中から鮮やかな色が覗いているから。色って不思議で、その存在だけで気分を作ってしまうのだ。スースの「色と気持ちと自分」をうたったリズミカルな詩は、厚み、深みの感じられるアクリル画といっしょに絵本の形をした万華鏡の中で動き出す。色、色、色――、わたしの人生これだけで、しあわせ一杯になる。(asukab)

いろいろいろんな日

いろいろいろんな日