欲張り過ぎた、奇妙きてれつマジカル絵本『Jungle Gym Jitters』by Chuck Richards

 『Jungle Gym Jitters』は、何だか知らないがいろいろなところで耳にしていたような気がする。ならば実物を見てみようと図書館で借りてきた。
 うわ〜お、これはただ者ではないイラストレーション。大判サイズにクローズアップの驚愕顔――この表紙からして目まいのしそうな圧迫感に襲われる。イラストはうっすらとしたブルーグレイ+薄茶で着色されているが、誰もが一目でオールズバーグのモノクロ世界を連想することだろう。柔らかいアニメーション的な表現と細部に凝った緻密な遊びが、違いといえば違いだろうか。影を生かした画面には遠近法によるソフトな動きが満ちている。作者はオールズバーグと同様大学で美術を教える学者だから、何となく彼らの趣向に触れた気もした。
 ストーリーは、少年ジェリーの父ジョージの奇想天外なジャングルジム作りを描く。父親がとんでもない発想に目を輝かせ計画を遂行する過程に、ジェリーは逆にいらいらさせられる。では、一体どんなジャングルジムができるのだろう。ここは作者のイマジネーションのオンパレードだ。空に向かってどんどん高くなる空中ジャングルジムには動物も加わり、大遊園地、サーカス、カーニバル……子どもの好きなものがすべて詰め込まれる。現実となった空想空間は、まさにマジカル。計画はちょっと行き過ぎちゃうのだが。
 語りの対句表現は視覚と同じように凝っているけれど、内容自体は少々平凡の域かもしれない。結末がどたばたし過ぎで、イラストの完成度の高さに似合わず安っぽくなってしまった。5年の歳月をかけたという大作絵本は、イラストを堪能するだけでおなかが一杯になる。子どもには、そこが楽しいだろう。(asukab)

Jungle Gym Jitters

Jungle Gym Jitters