家族観を問うノンフィクション絵本『and tango makes three』
新聞で取り上げられていたので『And Tango Makes Three』(邦訳『タンタンタンゴはパパふたり』を読む。ペンギン好きの娘は大喜び。これはノンフィクション絵本。実際、ニューヨーク市セントラルパーク動物園で起きたことを絵本にしたものだった。米国の多様化する家族像を浮き彫りにする作品と捉えていいだろう。
ロイとシロは雄ペンギン。まるで夫婦のようにいつもいっしょにふるまうことから、飼育係のグラムゼイさんは2羽が相思相愛であることに気づく。他のカップルが卵を孵化しているのに、ロイとシロは当然ながら卵すら産めない。そこでグラムゼイさんは、別のカップルが孵化できずにいる卵をひとつ、彼らの巣に置いてみた。2羽は懸命に卵を温め、ある日赤ちゃんペンギンのタンゴが誕生する。
生物界では少数派として同性愛はずっと存在してきた。それが証明されるひとつのエピソードを語る絵本だった。人間社会は、子孫繁栄のために男女が組み共同体となる家族を重んじる。でも、歴史上では、そうでない編成もたくさん存在したんだろう。雌雄でなければ不自然などということは全くなく、雄雄、雌雌だって自然なのだ。ただ、少数のため集団からは外れてしまうのだが。
息子が赤ちゃんだった頃、子育て雑誌は「新しい家族観」として養子、あるいは精子ドナーで生まれた子どもを育てる同性愛カップルの特集を盛んに組んでいた。彼らは今、どうしているのだろう。子どもが成長するにつれ、どんな現実に直面しているのか。でも最近ではすでに当たり前だからか、多様化家族の特集は組まれなくなった。娘はどうやったら赤ちゃんペンギンが産まれるのか、さかんに尋ねてきた。赤ちゃんを囲む親子っていいものね。愛情さえあれば、形はどんなものでもいいんだよね。これはイデオロギーかもしれないが、少なくともロイもシロもタンゴを囲んで幸せそうにしていたもの。彼らの姿こそ、愛情あふれる家族の象徴といえるのだ。
作者はコロンビア大学で精神医学を教える学者と、ニューヨークで活動する脚本家の2人。実話であることが、さらなる説得力を持つ。(asukab)
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