甘いお菓子に目のない娘に読ませたかった、豆ぼうやのお話

 アンデルセン絡み*1*2で「豆付いて」いたところに、もう一冊。『Little Pea』(邦訳『まめぼうやのリトル・ピー』)は今冬雑誌で紹介されているのを見て以来、絶対娘に読まなければ〜と思っていた絵本である。登場するのは、まめぼうや、まめかあさん、まめとうさんの3粒。ほのぼのお豆一家のお話だ。
 ……まめぼうやは、元気いっぱいのグリーン・ピースです。ぼうやには、好きなことがたくさんありました。たとえば、コロコロコロっといきおいをつけて坂をころげおりることがすきでした。お友だちと遊ぶことも、すきでした。まめとうさんがおうちに帰ってくることも、たのしみでしかたありませんでした。とうさんはスプーンのシーソーで、ひゅーんとぼうやをちゅうにとばしてあそんでくれます。ぼうやはうれしくて、「もっと、もっと!」とおねだりしました。……
 冒頭では小さな子どものいる幸福な家庭がお豆一家を通して投影され、ほっこり気持ちが安らいだ。丸い顔に点の目と笑った口だけで描かれるスマイルを見れば、何だかじんわ〜りと心が和んでくる。手書き風の活字にも、温もりがいっぱい。
 さて、豆ぼうやにはひとつだけ苦手なものがあった。それは、夕食に出てくるキャンディ。大きくて立派なお豆に成長するため、キャンディはしっかり食べなきゃいけないと両親から促される。全部食べたらデザートには豆ぼうやの大好物ほうれん草が出てくるというから、思わず笑ってしまう。
 なんという視点の転換! 野菜嫌いで甘いものばかりを食べたがる娘に読ませたかった理由は、この皮肉たっぷりの設定――お豆ぼうやの嫌いな食べ物が子どもの大好きなキャンディで、多くの子どもがあまり食べたがらないほうれん草がお豆ぼうやのデザートという発想――にあった。キャンディや野菜を食べるとき娘は必ず豆ぼうやのことを連想すると思うし、そこから食べ物と成長の関係を意識し始めるんじゃないかと考えると、うまく作られた絵本だなあと感心する。作者は1児の母ということで、なんともお母さんらしい運び方と納得した。
 イラストに関しては、余白の多さ、キャラクターの表情がまるで日本の絵本のようで、一瞬目を凝らして見入ってしまったほど。日本人イラストレーターによる仕事と言われても、全く違和感がない。邦訳されたら、日本の家庭を描いたような心の和む絵本になるだろうなあ。テーマの絞られたお話には、無駄を省いたイラストがしっくりくる。メッセージのはっきりしている絵本には、重厚な絵よりもあっさりとした絵がお似合いなのだ。物足りないと感じる人はいるかもしれないけれど、視覚的にこれはこれでまとまっていると思った。
 偶然にも娘は今日、この絵本を教室で読んでもらったそうである。「7歳になったら、緑の野菜食べるから」と夕食時に言い訳していたけど、豆ぼうやのことを思い出していたのかな。(asukab)

まめぼうやのリトル・ピー

まめぼうやのリトル・ピー