おばあちゃんと猫

 昨日のケイト・バンクス&ゲオルグ・ハレンスレーベン*1つながりで、『The Cat Who Walked Across France』(邦訳『ねこくん、わが家をめざす』)を読む。
 おばあちゃんと猫って、洋の東西を問わず、ほっこり絵になる。この絵本の主人公は、南フランス地中海沿岸セントロペスでおばあちゃんと暮らす猫。おばあちゃんはいつも背中をやさしくなでながら、「いい子だねえ」と可愛がってくれた。でもおばあちゃんが亡くなり、猫は家財道具といっしょに北フランス、ルーアンまで送り届けられる。ここでは、誰も背中をなでてくれない。見捨てられた猫は、懐かしい温もりを求めて旅に出る。目に見えないものに後押しをされ、猫はおばあちゃんと過ごした海辺の石造りの家を目指した。
 ルーアンからパリ、シャンボール、ブルゴーニュ地方を抜け、モンブラン越え、ポン・デュ・シャトー、そしてセントロペスへ。長距離の旅は実際に可能なのか定かではないが、猫のフランス紀行は読者の目を楽しませてくれる。セーヌ川ノートルダム寺院エッフェル塔、のどかな田園風景、雪のモンブラン……。おなじみのフランスの景色が美しい絵画の中に紹介され、猫の姿を追うだけでも土地の空気に包まれているかのようだ。セントロペスの風を感じたときの猫の気持ちはどんなだったろう。
 子どもより大人向けの絵本かもしれないが、猫の孤独と幸せは小さな読者にも伝わりそうだ。在仏作者ならではの視点の据え方が感じられた。ハレンスレーベンの画風って、しみじみフランスそのものだと感じてしまう。大胆な筆さばきと厚塗りの加減が、芸術の都パリ仕込み……みたいな雰囲気を放っている。(asukab)

ねこくん、わが家をめざす

ねこくん、わが家をめざす