押入れお化けの逆バージョン

 『Jitterbug Jam (New York Times Best Illustrated Books (Awards))』は地元作家の絵本デビュー作とあってか今年、どの書店でも大々的に目立つ場所に置かれていたような気がする。ここにきてNYT紙のベスト・イラスト賞を受賞したから、当地では知名度が確立されたというところかな。お話はお休み前の子どもの心理を描くクラシックなテーマなのだが、主人公はモンスター(お化け)というところが味噌。
 マーサ・メイヤーの『おしいれ おばけ』は、ベッドタイム絵本の定番中の定番だった。クローゼットの中から出てくるお化け(モンスター)の存在が、怖いもの見たさの息子、娘を大いに魅了した。さて、こちらシアトル発の作品は、設定がすべて逆になる。モンスターの子どもがになると――彼らは夜活動し、昼間は寝ている――ベッドの下にいる人間の男の子を怖がるお話で、本来なら恐れられているはずのモンスターがどんな思いをしているのかが子どもの口調で語られる。
 しかし、このモンスターの子どもBoboの話し言葉がなかなか曲者で――間違った英語表現や、理解しづらい固有名詞など――、息子が読後「これ、きっとフォーリン(外国)の人か、子どもが書いたお話だよ」と言っていたくらい。別世界の人が書いたような見せ掛けや子どもらしさが旨く出ているという賛辞にも取れるけど、わたしにはすっきりと意味が通らずもやもやが残ったまま読み終わるという感じだった。柔らかく渋い色合いのイラストが夢のような空想のような不思議な世界を表していて、それがまたはっきりとイメージできない空間を助長していたのかも? 人物の描かれ方は、センダック風でなかなか味わい深いけれど。虫の存在やおじいさんの作中話は、内容をさらに複雑化していたような気がする。細部に懲りすぎているのかもしれないな。
 とてもユニークな切り口なので、メイヤー作品のようにすんなり心に飛び込んでくるお話だったら大ファンになっていたんじゃないかと思う。(asukab)

Jitterbug Jam (New York Times Best Illustrated Books (Awards))

Jitterbug Jam (New York Times Best Illustrated Books (Awards))