まるまる太ったにわとりと奥さん方

 『The Problem With Chickens (New York Times Best Illustrated Children's Books (Awards))』の表紙は、新聞などさまざまなところで見かけていた。いずれにしても、その印象から浮かんだ修飾語は「まるまる」という副詞。実際に読んでみて、出てくるにわとり、奥さん方は、やっぱり「まるまる」。質感のあるふっくらとした曲線が、包み込むような安堵感を提供する。作者たちは、ともにアイスランド人である。
 というわけで、舞台はアイスランドのとある村。卵が手に入らない状況を変えようと、村の奥さん方はにわとりを飼い始めた。にわとりはちゃんと卵を産み、奥さん方は大喜び。ところが、ここから問題が生じてしまう。にわとりたちが、人間のように振舞い始めたのだ。奥さん方がブルーベリー摘みや誕生パーティーに出かければ、にわとりたちもいっしょについて来る。歌を歌えば、にわとりたちもいっしょに歌う。人間のまねばかりするものだから、いつの間にか卵は産まなくなり、奥さん方は大弱り。そこでみんなが集まって知恵を絞った結果、「運動する」という案を実行することに。エクササイズする奥さん方のまねをして、にわとりたちも体を鍛え始めた……。
 ここからどうやって卵を産ませるのか、なんだか不思議な絵本だと怪しんでしまったくらい。「変なお話だったね」と息子に漏らすと、「そうかな。ぼく、好きだったよ。にわとりがエクササイズするところ」とのこと。……うん、確かにナンセンスで、ここは笑える。それに、にわとりと奥さん方の描写は、ほかの絵本には見られないキャラクターだし。アイスランドの風土、愛嬌のあるにわとり、生活の担い手である奥さん方が、重ね塗りのイラストにおおらかに描かれる。そう思って調べてみると、絵はなんと油絵! なるほど、重厚感から生まれる豊かな風合いは、油のなせる業だったのだ。画家は国民的アーティストとたたえられているそうで、振り返ってみればどのページも納得のいく「一枚の絵」である。
 アイスランドは火山の国という印象しかなかったけれど、生活ぶりを垣間見られたことは収穫だった。アイスランド語って北欧言語のひとつで、地名や名前には難しい記号がたくさんついている。そんな文化性に触れることができただけでも、一読の価値はあったんだろう。
 娘が近所のおばあちゃんから「まるまる」太ったにわとりの置き物をいただき、タイミングのよさに笑ってしまった。首にリースをかけていて、ちゃんとクリスマスの仕度をしている。うちの飾りつけも終了。
 本日(日曜日)は、降臨節第1主日アドベント・キャンドルを灯すくらいの余裕が欲しいなー。(asukab)

The Problem With Chickens (New York Times Best Illustrated Children's Books (Awards))

The Problem With Chickens (New York Times Best Illustrated Children's Books (Awards))