タビー猫モグのクリスマス

 あれ? 何だかいつもと様子がちがうよ。タビー猫モグが朝目覚めてみると、トーマスさん一家はみな忙しそう。部屋を飾ったり、お料理をしたり、贈り物を準備したり。ただならぬ雰囲気にモグは居心地が悪くて、ひっそり窓の外から家を見守ることにする。今日はいったい、何の日なの?
 また、モグのクリスマス絵本『Mog's Christmas』(邦訳『モグのクリスマス』)を楽しむ季節がやってきた。うちではみんなが、太っちょタビーのモグに魅せられている。猫っていつ何時も「ほうっておいてちょうだい」の生き物なので、モグにとっても何かとあわただしいクリスマスは迷惑千万。無垢で茶目っ気たっぷりの彼女がそこをどうやって克服(?)するのか、猫心を知りえた作者がユーモアを交えて教えてくれる。
 描かれているトーマスさんちのクリスマス風景は、心地よい温もりそのものである。たとえてみれば、ブリキ缶に入っているバニラ風味のビスケットをかじると見えてくる風景……みたいな感じかな。舞台は英国だけれど、なぜか懐かしさが伝わる情景だ。そして、モグの表情。これが猫にもかかわらず人間味いっぱいで、見つめていると思わず顔がほころんでくる。猫好きさんには、たまらない絵本。
 モグ・シリーズはすべて読んだけれど、クリスマスのエピソードが1番よかった。『おちゃのじかんにきたとら*1に通じる温かい家庭描写は、作者にとってお手の物といったところかな。(asukab)

モグのクリスマス

モグのクリスマス