ミシュカの決心

 『ミシュカ』は、実家の母が息子に贈った最初のクリスマス絵本。約70年前におきたフランスの新教育運動から生まれた、ペール・カストール文庫の1冊である。包みを開けたとき、あまり見かけない表紙だなという印象だったけれど、それがかえって新鮮だった。今日、娘と読み、クリスマスのメッセージが静かに深く伝わる名作だとあらためて感心する。
 これは1匹のくまのぬいぐるみ、ミシュカのお話。「なんにしたって、ぼくは くまなんだ! ひとりで あるきまわるとか、なんか すきなことを やってみたいよ。あんな いじわるな子の いいなりになっていないで……」。いっぺんにおもちゃが25個なければ遊ばないという、いばりやでおこりんぼうの女の子エリザベッドの家を飛び出し、ミシュカは森の中で自由な身の上を心ゆくまで味わう。ふと聞こえてきたのは、2羽のガンの会話。「今夜は、クリスマス」「みんな、なにかひとつ いいことをしなくちゃ いけないのよね」。クリスマスのことを知ったミシュカはこの後、サンタクロースのそりを引く1頭のトナカイに出会う。
 この作品は、最初と最後に示される2人の子どものイラストがすべてを物語る。それぞれ、見開きで部屋の様子が描写されるのだが、この2枚の絵とミシュカの姿がどれほどクリスマスの意味を象徴していることか。真に子どもたちの成長を願って生まれたカストール文庫たるゆえんはここにある。計算ずくめで生まれた絵本ではない、心のあり方を示す絵本はクリスマスにふさわしい。
 途中、森の描写がちょっと間延びしているかな……と感じたが、子どもはそこが気に入っていたりしていて意外だった。「お決まりの型」にプロットや展開をはめ込もうとしていた自分が見えてしまった。(asukab)

  • 邦訳の書影がないので仏語版で

Michka (Coleccion Rascacielos)

Michka (Coleccion Rascacielos)