クリスマス・イブの魔法

 クリスマス・イブのほんのひとときを描く『クリスマス・イブ』は、不思議な絵本である。イラストに使用される色がオレンジと黄で、個人的に抱くクリスマスのイメージからほど遠かった。雪降る夜のシーンが、オレンジ色? ところが、2色で彩色されるペン画と作者ブラウンの繊細な詩がいっしょになると、織りなされる時空は魔法がかってくる。クリスマス・イブのときめきと華やぎ、ぬくもりが、包み込まれるように伝わってくるのだ。静かに聞き入る息子と娘にとっても、それは同じ体験だったと思う。
 主人公は4人の子どもたち。なかなか寝付けないイブの夜、こっそりベッドを抜け出し、クリスマスツリーに触れて願いごとをしようとする。胸をドキドキさせながら階段を下り、まだあたたかい居間でクリスマスのにおいに包まれる瞬間のなんとしあわせなこと。もみの木の香り、暖炉の火のはぜる音、しんと舞う雪、戸外から聞こえるクリスマス・キャロル――。
 思い出したのは、母教会でのイブ礼拝とキャロリング。古いチャペルに揺れるろうそくの灯りと流れるオルガンの音色が、わたしにとっては魔法だった。イラストのオレンジと黄は、暗い季節に光を求めた人々の、クリスマスの希望と温もりを象徴する色なんだろう。(asukab)

クリスマス・イブ

クリスマス・イブ