大人も夢中になる - ehontechoの日記

　週末読んだ絵本に『Can You Find It Outside?: Search and Discover for Young Art Lovers (Can You Find It S.)』――さしあたり「おそとでさがしてごらん？」という感じかな――があった。メトロポリタン美術館の絵本って、子どもも大人もアートを楽しめるように工夫されたものが多くて大好き。同美術館は名画だけでなく文化資料として絵画収集・展示に努めている印象があるのだけれど、このシリーズにもそんな趣が反映され、多様な文化背景のアートが紹介される。色合いや風合いの異なるそれぞれの絵の中で探し物をすることにより、アートを見る目が一味も二味も変わるのだった。
　それで感動したのが、「おそとでさがしてごらん？」に出てくる画家Robert Blum(1857-1903）の「The Ameya（飴屋）」という油絵作品。1904年に描かれたという絵には明治初期――というより江戸末期――の街角で飴を売る職人とそこに集まった子どもたちの姿が描かれ、ちょっとした時間旅行の感覚が味わえる。見入れば見入るほど、「この時代のこの風景を油絵で写実的に描いた不思議さ」に引かれてしまう。子どものまとった着物の柄、結った髪型、背におぶった赤ちゃんの顔などに表れる、対象となった時代とメディアとなった西洋画法の差異が新鮮だ。着色された写真を見て描いたのだろうが（わたしにはそうとしか思えない）、そんな匂いを漂わせているところもおもしろい。
　絵を鑑賞する楽しさがたっぷり堪能できるシリーズは、時間と場所を飛び越えた絵画の旅に誘ってくれる。(asukab)