本当にあったお話

 『Hot Air: The (Mostly) True Story of the First Hot-Air Balloon Ride (Caldecott Honor Book)』は、しゃれたノンフィクション絵本。1783年9月19日ベルサイユ宮殿――ルイ16世、マリーアントワネット王妃ら宮廷人を含めた大観衆が見守る中、モンゴルフィエ兄弟製作による気球飛行が公開された。有人飛行に備え人類初の気球乗組員になったのは、(なんと!)農場から連れてこられたあひる、おんどり、ひつじの3匹。いったい、どんな飛行になるのだろう。
 副題にある「ほとんど実話」という表現、表紙のきょとんとした3匹の表情を目にすれば、本作品は作者が思い描いた飛行物語であることがわかる。飛行中のユーモラスなイメージは大きなコマ割りの中に鳴き声のみで表され、何も知らない動物たちの状況を思えば、思わず笑いがこみ上げてくるというものだろう。3匹がどんな8分間を過ごしたのか、想像すればするほど愉快になってくる。コルデコット・オナーということであらためて読み返し、実話がイマジネーションでほんのり味付けされている魅力を感じた。
 主人のクラスで毎年、気球の実験を行っているが、今年はその気球に「Quack! Baaaa! Cock-a-doodle-doo!」と鳴いた3匹のイメージが加わり、さらに盛り上がりそうだ。ベルサイユ宮殿気球ショーには、米政治家で科学者のベンジャミン・フランクリンも招かれていたというから親しみが湧くんじゃないかな。科学と歴史にお話がドッキングした絵本は想像の広がる分、鮮やかな印象が残る。もちろん、プライスマンの粋で快活なイラストの果たす役割も大きい。裏表紙見返しに、モンゴルフィエ兄弟製作の気球の歴史がまとめられている。
 トリノ冬季五輪開会式。古代ローマ、山岳文化、ルネサンスフェラーリ、オペラ、服飾、食……、世界に誇れる文化のなんと多いこと。イタリアのぶ厚さを実感した。車好きの息子はかねてから、イタリア、ドイツを訪ねたいと言っていたけれど、ここにきてさらにイタリアに魅せられる。ベルサイユ宮殿の写真を見せたら、そこにフランスも加わりヨーロッパ旅行の夢は広がるばかり。(asukab)

Hot Air: The (Mostly) True Story of the First Hot-Air Balloon Ride (Caldecott Honor Book)

Hot Air: The (Mostly) True Story of the First Hot-Air Balloon Ride (Caldecott Honor Book)